キャディバッグに刺繍するという困難に挑んだ刺繍屋さんに刺繍に対する思い入れを聞いてみた

刺繍業を営んでいる奥村さん。あるきっかけで、キャディバッグ刺繍を始めたとのことですが、非常に手間がかかりそうなキャディバッグの刺繍という仕事を、なぜ、始めたのか、また、刺繍に対する思入れはあるのかを詳しく聞いてみた。

宇城
こんにちは。今日は、福井市四ツ井で刺繍全般およびキャディバッグ刺繍を専門にしているNSKOさんにお邪魔しました。どうぞ、よろしくお願いいたします。
奥村さん
キャディバッグ刺繍の奥村です。どうぞ、いらっしゃいませ。

1.刺繍という仕事について

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宇城
キャディバッグ刺繍については、一緒にサイトを立ち上げたということもあり、事業のこともよく知っているのですが、通常業務でされている刺繍のお仕事についてお聞かせください。
奥村さん
作業服などのネーム刺繍が多いですね。主に問屋さんなどから、お仕事をいただいています。
宇城
よくみかけるワインポイントの刺繍のことですね。なるほど。このような仕事が多いのですね。ところで、刺繍という業界ですが、いい悪い含めて、いまはどんな状況なのですか?
奥村さん
刺繍だけを専門で行う会社さんは少なくなってきています。今は、メーカが直接、刺繍もするようになってきましたね。生地メーカが洋服を作り、そのまま刺繍もして、問屋を通じて小売店に納品する流れもできてきています。スポーツメーカーもこの流れになってきますね。我々みたいな二次加工屋さんは、必要なくなってきている状況です。
宇城
いわゆる今までのような刺繍業だけでは経営は難しくなってきそうな雰囲気ですね。業界的には下降気味ということですかね?
奥村さん
わたしの場合は、鯖江国体が終わって需要が激減したときに参入したので、業界的には悪い時期しか知らない状態でした。弊社も含めて、生き残りをかけ、いろいろ試行錯誤している状況だと思います。ちなみに、刺繍を専門に行う会社は、2通りにわかれると思います。量産型の会社さんと専門店型の会社さんです。どちらがどうとは言えませんが、わたしは、専門店型に活路を見出しました。
宇城
奥村さんは、元々は何をされていたんでしたっけ?そもそも、どのような状況で、この業界に参入されたのですか?
奥村さん
もともと、嫁さんの親が刺繍業をしていて、わたしが、その仕事を引き継いだような感じです。実は、始めた当初から、オリジナルの刺繍をネットで販売しようと思っていました。活路を見出すには、それしかないかなと思っていましたし、他社さんと同じやり方で営業するつもりはありませんでした。
宇城
始めた当初のネットのライバル状況はどうでしたか?ネットで販売している刺繍屋さんはいなかった?
奥村さん
その当時は、いわゆる、ちゃんとしたサイトを運営していた会社は2社ありました。ただ、大手が片手間でネットに参入するぐらいのイメージが近いかもしれません。なので、ネットに参入する余地はあったと思います。

2.刺繍の魅力とは

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宇城
奥村さんは、刺繍そのものに対する思い入れ、こだわりみたいなものってありますか?
奥村さん
ありきたりな答えかもしれませんが、刺繍って、糸なんですよ。光沢のある糸なんですね。なので、プリントとか印刷物とかと比べると、全く違う表現方法なんですよ。刺繍独特の光の当たり方ですし、反射の仕方が全く違います。刺繍糸って縒(よ)ってあるので見え方が絶妙なんです。

糸を縒(よ)るとは、糸を何本かをねじり合わせて1本にすること。

奥村さん
また、刺繍すると、糸の分だけ盛り上がりがありますよね。必ず、真ん中あたりは盛り上がるんです。周りは沈み気味になる。ということは、そこに光があたると、陰と陽ができるわけですよ。光っているけど暗い部分もあり、また、その逆もあるんですね。角度によって陰影がでてきて、それが、非常に美しく感じてしまうんですよね。うん。美しさ。それができるのは刺繍だけかな~って。それって、ぼくだけかなぁ(笑)
宇城
いえいえ、表現の仕方が面白いです。わかりやすいですね。素人のわたしでもイメージできましたよ。ところで、刺繍に向いている素材ってありますか?例えば、Tシャツはあまり向いていないですよね?なんとなくですけど。
奥村さん
どの大きさの刺繍をするのかにもよりますね。小さい刺繍であれば、Tシャツでもいいですし。大きな刺繍だと、Tシャツではアンバランスですよね。刺繍は重量があるので、重くなりますし。あとは、コストの問題ですね。プリントだとコスト的には安くなりますよね。そういう意味では、Tシャツにはプリントの方が向いているかもしれませんね。

 

3.刺繍をする機械について

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宇城
刺繍をする専門の機械となると特殊なものになりますか?
奥村さん
まぁ特殊といえば特殊ですが、ミシンです。いろいろ出来る機能があるから業務用ということにはなりますが、基本、家庭のミシンと同じですよ。仕事の規模により、そのミシンを何台おいておくかというだけですね。
宇城
なるほど。では、キャディバッグ専用の刺繍の機械はどうですか?
奥村さん
キャディバッグは、大きいし、形が複雑なので、刺繍するのは難しいですよね。あと、パワーがいりますね。太い針を通す必要あるので。また、キャディバッグを、どうやって固定するかも問題なんです。何度も試行錯誤して、いまでは、安定的に刺繍できるようになりました。
宇城
刺繍の機械は特殊なものと思っていたのですが、機械にそれほど違いがないとなると、どこで差別化できるんですかね?刺繍する方の技術の違い、プロとアマの違いとかはありますか?
奥村さん
プロとアマの違いは、データの作り方ですね。CADを使うわけですが、どのポイントから針をおとすかを考えながらデータ作るわけです。プロはそれがうまい。うまいということは、きれいで速く刺繍できるんです。逆に、それを間違うと、出来がよくなくて、遅いんですよね。

4.キャディバッグ刺繍に本気になった理由は?

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宇城
どういうきっかけで、キャディバッグ刺繍を本格的に取り組んだんでしたっけ?
奥村さん
苦い経験からですよ!最初、お客さんからキャディバッグに刺繍をしたいと言われて、安易に受けてしまったんですね。しかし、大失敗。キャディバッグも弁償。当時は、受けなければよかったと思いましたよ。でも、お客さんは、それでもキャディバッグに刺繍に熱望されていたんです。なので、なんとかしないと!なんとかしてあげたい!と思って、機械の改良に取り組んだんです。第一歩はそこでしたね。
宇城
試行錯誤を経て、キャディバッグ専用の機械が完成してからは順調でしたか?
奥村さん
仕事で失敗は少なくなりました。でも、受注を増やす方法を知らなかった。笑い話ですが、宇城さんと一緒にホームページの内容とか考えてながら、少しずつ作成していたじゃないですか?ホームページが完成する前から問い合わせがくるという、びっくりすることありましたよね。それで感じたんです。お客さんは、キャディバッグに刺繍したい方がたくさんいるのかなと!
仕事としては、すごく楽しいです。ゴルフは趣味の世界というのもあり、こだわる方が多い。だから、わたしも期待に応えるために、技術力がドンドンあがっていったんです。それこそ、ツアープロから一流芸能人など、ここでは書けない方々のキャディバッグを刺繍できて、とてもいい経験させてもらっていますね。常に新鮮で面白いですね。ちなみに、キャディバッグの刺繍をはじめた当初は、ゴルフをしていませんでしたが、お客さんがあまりにゴルフを勧めるので試しに始めたら、はまっちゃいました。いまでは、100も余裕で切れるぐらいまでに(笑)

5.キャディバッグ専用のホームページを作ってから変わったことは?

宇城
うけますねぇ(笑)そういえば、ホームページが完成する前から問い合わせがきてましたね。確かに。ところで、キャディバッグだけの専用ホームページを作ってどんな変化がありましたか?
奥村さん
ビジネスの根本が変わりましたよ。それまでは、一般のネーム刺繍がメインでしたが、今では、柱がもう1本できた感じですよね。宇城さん様様です。
宇城
キャディバッグの刺繍の仕事は年中あるものなんですか?繁忙期、閑散期はありますか?
奥村さん
繁忙期、閑散期は、ほとんどないですね。年間通して受注があります。特に、キャディバッグの新作がでる3月4月は、たくさん受注いただきますね。お客さんからすると、ネットでキャディバッグを注文し、購入したキャディバッグは、ネットショップから弊社にそのまま送って、数日後、刺繍されたキャディバッグが自宅に届くという、全部ネットだけで刺繍できたかっこいいキャディバッグが自宅に届くんですよ。これは、すごいことですよね~!こういう感覚で海外とも取引できたらいいなぁ~と思っているんですよね。
宇城
いまでは、キャディバッグをネットで購入することも普通になりましたし、確かに、すごいことですよねぇ~。ところで、わたしと奥村さんは、定期的に打ち合わせしながら、新しいアイデア出しなどしているわけですが、わたしからの提案で何か良かった提案とかありました?
奥村さん
そりゃ、ありましたよ(笑)キャディバッグの受注が増えてきた段階で、無地のキャディバッグを仕入れて、フルラインの刺繍をしたらどうか?と提案くれましたが、いまでは、フルラインの受注も結構ありますよ。海外展開の話しとかもありましたし。あと、普段、打ち合わせしているだけで、アイデアひらめくときもありますし、宇城さんはいるだけで提案力あるんじゃないですかね(笑)
宇城
ありがとうございました(笑)

6.まとめ

宇城
結構話し込んでしまいましたね。今日はありがとうございました。最後に、刺繍業のことやキャディバッグ刺繍について今後どうしていきたいとかありますか?
奥村さん
キャディバッグ刺繍については、更に大きな展開ができる事業と考えています。今は日本での活動ですが、海外進出もしたいですね。英語も勉強中ですし!
宇城
英語を勉強してる?まじですか?
奥村さん
毎日、車で英会話聞いてるよ!しゃべれないけどね。でも、なんとなくは分かる気がする(笑)海外展開は、いつか、自動翻訳機ができてからかもしれないけどね・・・まぁ、ジェトロとかそういうセミナーも出たりして、情報集めはしていますよ。
宇城
ゴルフの本場はアメリカ、ヨーロッパなので、需要はありそうですよね。ただ、刺繍というものが流行るかどうかは、現地調査など実際に行って肌で感じる必要があるのかもね~。
奥村さん
そうそう。少しずつ情報集めして、現地の展示会などに出展してみたいですね。
宇城
頃合いをみて、ヨーロッパかアメリカ遠征いきましょう!
屋号 NSKO株式会社(ネスコ株式会社)
所在地 〒910-0846 福井県福井市四ツ井1丁目22-26
電話 0776-43-0456

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